系統樹思考の世界:すべてはツリーとともに

三中信宏



講談社[現代新書1849]
ISBN-10: 4-06-149849-5
ISBN-13: 978-4-06-149849-5
296ページ,本体価格840円

第1刷(2006年7月20日刊行)
第2刷(2006年8月3日刊行)→正誤表
第3刷(2009年12月18日刊行)→正誤表
第4刷(2010年5月10日刊行)→正誤表
第5刷(2011年10月7日刊行)→正誤表
電子本(2013年6月28日刊行)→eBook版Kindle版
第6刷(2015年4月14日刊行) *new*

反響録(書評と言及など)
講談社現代新書ページ


目次(→詳細目次


プロローグ:祖先からのイコン――躍動する「生命の樹」 11


第1節:あれは偶然のことだったのか…… 13
第2節:進化的思考――生物を遍く照らす光として 15
第3節:系統樹的思考――「樹」は知の世界をまたぐ 19
第4節:メビウスの輪――さて,これから彷徨いましょうか…… 28


第1章:「歴史」としての系統樹――科学の対象としての歴史の復権 33


第1節:歴史はしょせん闇の中なのか? 35(*1, *3
第2節:科学と科学哲学を隔てる壁,科学と科学を隔てる壁 48(*3
第3節:アブダクション:真実なき探索――歪んだガラスを覗きこむ 55(*2
第4節:タイプとトークン――歴史の「物語」もまた経験的にテストされる 66


第2章:「言葉」としての系統樹――もの言うグラフ,唄うネットワーク 83


第1節:学問を分類する――図像学から見るルルスからデカルトまで 85
第2節:「古因学」――過去のできごととその因果を探る学 95
第3節:体系学的比較法:その地下水脈の再発見――写本,言語,生物,遺物,民俗…… 104
第4節:「系統樹革命」――群思考と樹思考,類型思考と集団思考 113


インテルメッツォ:系統樹をめぐるエピソード二題 131


第1節:高校生が描いた系統樹――あるサイエンス・スクールでの体験 133
第2節:系統樹をとりまく科学の状況――科学者は「真空」では生きられない 143


第3章:「推論」としての系統樹――推定・比較・検証 161


第1節:ベストの系統樹を推定する――樹形・祖先・類似性 163
第2節:グラフとしての系統樹――点・辺・根 168
第3節:アブダクション,再び――役に立つ論証ツールとして 176
第4節:シンプル・イズ・ベスト――「単純性」の美徳と悪徳 181
第5節:なぜその系統樹を選ぶのか――真実なき世界での科学的推論とは? 189


第4章:系統樹の根は広がり続ける 209


第1節:ある系統樹的転回――私的回顧 211
第2節:図形言語としての系統図 217
第3節:系統発生のモデル化に向けて 222
第4節:高次系統樹――ジャングル・ネットワーク・スーパーツリー 232


エピローグ:万物は系統のもとに――クオ・ヴァディス? 251


第1節:系統樹の木の下で――消えるものと残るもの 253
第2節:形而上学アゲイン――「種」論争の教訓,そして内面的葛藤 257
第3節:系統樹リテラシーと「壁」の崩壊 261
第4節:大団円――おあとがよろしいようで…… 263

あとがき 267
さらに知りたい人のための極私的文献リスト [291-273] *new*
索引 [295-293]
自己紹介文(カバージャケット裏側)
“セフィロト樹”(カバージャケット内側)

 *1) 本節は,2010年の静岡理工科大学一般入試「国語」の「問題II」として出題された.

 *2) 本節は,2010年の熊本県立大学文学部日本語日本文学科一般入試(後期日程)の「小論文」課題として出題された.

 *3) 本節は,2012年の桜花学園大学入試「国語」の「問題1」として出題された.



【口上】

本書は「生物学が歴史学と融け合う場」を描こうとする.自然科学はいつの頃からか人文科学と袂を分かってしまった.生物学の過去を振り返ると,実験や観察に基づく「実証的」とされるアプローチが力を得て,ナチュラル・ヒストリー的なスタンスを軽視する風潮が強かった.しかし,生物の過去の歴史(系統発生)を復元し,その変遷(進化過程)を考察する進化学が進展するとともに,再び「歴史」が最前面に出てくるようになった.皮肉なことに,ゲノム科学に代表される分子生物学が時代の脚光を浴びている現在においても,生物の「歴史」が真の目標であることは必ずしも広く認識されているとはいえない.本書では,系統発生を表すイコンとしての「系統樹」をキーワードとして,生物学だけでなく神学・哲学・言語学・文献学・民俗学・認知科学・数学・コンピュータサイエンスなどに及ぶ分野横断的な視点に立って,系統樹が人間の思考のすみずみにまで浸透しているという事実を指摘し,「系統樹的思考法」がわれわれが思いこんでいる以上に広く深く浸透していることを示したい.そして,系統樹を通じて自然科学が本来もっている「歴史科学的視点」を復権させることを目論んでいる.この主張を自然科学と人文科学の異種融合と捉えるのは正しくない.歴史的に見るならば,もともと両者は一体だったのだから.


真実に到達するには,われわれは十分な資料に欠け,
そのような資料の解釈を徹底化する知的な手順にも欠けているのだ.
(フェルナンド・ペソア『不安の書』)


Last Modified: 20 May 2015 by MINAKA Nobuhiro