日本の自然草原の植生帯区分と温暖化による影響

この内容は、 学研サイエンスキッズ なんでも調べ隊で紹介されました。


1.気候要因からみた自然草原の植生帯区分

 自然草原の植生型を、ネザサ以外のササ(ミヤコザサ、チシマザサ、クマイザサ等)を代表的な種とする亜寒帯+亜高山帯、シバを代表的な種とする冷温帯、アズマネザサとシバを代表的な種とする暖温帯、それより南の亜熱帯の4つに区分しました。

 区分の際の境界線は、気候要因によって定めた。気候要因としては、寒さの指数(各月について、もしも月平均気温が5℃以下であれば、「その値−5」を加えていくことにより得られる値)、暖かさの指数(各月について、もしも月平均気温が5℃以上であれば、「その値−5」を加えていくことにより得られる値)、最暖月平均気温最大積雪深を用いることにより、植生帯の区分が可能となりました(下図のA)。
 高標高地のシバ草原については、これらだけではシバの分布限界を説明できなかったため、緯度をX、分布限界標高をYとする以下の2次式により境界を補正しました(下図のB)。
   Y=−32.539X2+2378.1X−41867 (R2=0.9885)

植生区分(元)

 上の図の中で、青と緑の境界がシバの北限で、寒さの指数−35以上かつ最暖月最低気温17℃以上にシバが分布していることを示します。緑と黄色の境界がアズマネザサの北限で、暖かさの指数100以上かつ最大積雪深40cm以下でアズマネザサが分布していることを示します。黄色と赤の境界がシバの南限で、暖かさの指数170以上ではシバ(一般にノシバと呼ばれる種)が生育しにくいことを示します。

参考文献:
西村 格・佐々木寛幸・西村由紀(2001)日本における自然草原の気候要因から見た植生帯区分とその温暖化による影響 2.自然草原の植生型と気候要因の関係.日本草地学会誌47(1),86-92.


2.植生帯区分の温暖化による変化予測

 気温が上昇するという直接的影響だけでなく、最大積雪深が変化することによる影響も考える必要があります。下図は最大積雪深40cm以下の領域が今後どのように変化すると予測されるかを示しています。

積雪変化

 次に、30年後と60年後における植生帯の区分の変化予測を下図に示します。

30、60年後

 この図から、30年後には北海道では大きな変化はないが、それ以外の高標高地帯では亜寒帯が後退・消滅していることがわかります。60年後には、北海道平野部まで冷温帯となります。また積雪の減少に伴い、北陸から新潟平野にかけては暖温帯となります。

 次に、100年後における植生帯の区分の変化予測を下図に示します。

100年後

 この図から、本州以南の亜寒帯はほとんどなくなり、亜熱帯が拡大することがわかります。また、北海道における植生帯の区分が大きく変化するようすがはっきりわかります。

 以上のように、植生帯区分は温暖化に伴い変化しますが、あまりにも急激に気候が変動すると、分布域の移動がそれに対応できない植物種(移動が遅い種類や、高山などに周囲から孤立して隔離分布している種類)は絶滅してしまう可能性がありますので、今後は代表的なものだけでなく、多くの種について追跡・保全していく必要があると思います。

参考文献:
西村 格・佐々木寛幸・浦野豊・小森谷祥明・井上聰・西村由紀(2001)日本における自然草原の気候要因から見た植生帯区分とその温暖化による影響 4.気候環境から見た日本の自然草原の植生帯区分とその温暖化による変化予測.日本草地学会誌47(1),102-106.


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