目次
PostGISでサポートされるGISオブジェクトは,OpenGIS Consortium (OGC)が定義する "Simple Features" のスーパーセットです. PostGIS 0.9版からOGCの"Simple Features for SQL"仕様で定められた全てのオブジェクトと関数をサポートしています.
PostGISは標準から拡張して 3DZ, 3DM, 4D 座標(訳注: それぞれXYZ,XYM,XYZM)をサポートしています.
OpenGIS仕様は空間オブジェクトの表現について二つの標準を定義しています.Well-Knownテキスト(WKT)形式とWell- Knownバイナリ(WKB)形式です. WKTもWKBも,オブジェクトの型とオブジェクトを形成する座標に関する情報を持っています.
フィーチャーの空間オブジェクトのテキスト表現(WKT)の例は,次の通りです.
POINT(0 0)
LINESTRING(0 0,1 1,1 2)
POLYGON((0 0,4 0,4 4,0 4,0 0),(1 1, 2 1, 2 2, 1 2,1 1))
MULTIPOINT(0 0,1 2)
MULTILINESTRING((0 0,1 1,1 2),(2 3,3 2,5 4))
MULTIPOLYGON(((0 0,4 0,4 4,0 4,0 0),(1 1,2 1,2 2,1 2,1 1)), ((-1 -1,-1 -2,-2 -2,-2 -1,-1 -1)))
GEOMETRYCOLLECTION(POINT(2 3),LINESTRING(2 3,3 4))
OpenGIS仕様では,空間オブジェクトの内部保存フォーマットが空間参照システム識別子(Spatial Referencing System IDentifier, SRID)を含むことも求められます. SRIDはデータベースへの挿入のために空間オブジェクトが生成される時に求められます.
これらの書式の入出力は次のインタフェースを用いて実現できます.
bytea WKB = ST_AsBinary(geometry); text WKT = ST_AsText(geometry); geometry = ST_GeomFromWKB(bytea WKB, SRID); geometry = ST_GeometryFromText(text WKT, SRID);
たとえば,OGC空間オブジェクトを生成して挿入する妥当なINSERTステートメントは次の通りです.
INSERT INTO geotable ( the_geom, the_name ) VALUES ( ST_GeomFromText('POINT(-126.4 45.32)', 312), 'A Place');
OGC書式は2次元ジオメトリしかサポートされておらず,また,入出力の表現においてSRID群は*決して*埋め込まれません.
PostGIS拡張書式は現在のところOGC書式のスーパーセットとなっています (全ての妥当なWKB/WKTは妥当なEWKB/EWKTです).しかし,特にもしOGCがPostGIS拡張と矛盾する新しい書式を出すことがあるなら,これは将来変更されるかも知れません.ゆえにこの機能に頼るべきではありません.
PostGIS EWKB/EWKT では 3dm, 3dz, 4d の座標サポートが追加され,SRID情報が埋め込まれます.
フィーチャーの拡張空間オブジェクトのテキスト表現(EKWT)の例は次の通りです.
POINT(0 0 0) -- XYZ
SRID=32632;POINT(0 0) -- XY with SRID
POINTM(0 0 0) -- XYM
POINT(0 0 0 0) -- XYZM
SRID=4326;MULTIPOINTM(0 0 0,1 2 1) -- XYM with SRID
MULTILINESTRING((0 0 0,1 1 0,1 2 1),(2 3 1,3 2 1,5 4 1))
POLYGON((0 0 0,4 0 0,4 4 0,0 4 0,0 0 0),(1 1 0,2 1 0,2 2 0,1 2 0,1 1 0))
MULTIPOLYGON(((0 0 0,4 0 0,4 4 0,0 4 0,0 0 0),(1 1 0,2 1 0,2 2 0,1 2 0,1 1 0)),((-1 -1 0,-1 -2 0,-2 -2 0,-2 -1 0,-1 -1 0)))
GEOMETRYCOLLECTIONM(POINTM(2 3 9), LINESTRINGM(2 3 4, 3 4 5))
これらの書式の入出力は次のインタフェースを用いて実現できます.
bytea EWKB = ST_AsEWKB(geometry); text EWKT = ST_AsEWKT(geometry); geometry = ST_GeomFromEWKB(bytea EWKB); geometry = ST_GeomFromEWKT(text EWKT);
たとえば,PostGISの空間オブジェクトを作成し挿入する妥当なINSERTステートメントは次の通りです.
INSERT INTO geotable ( the_geom, the_name ) VALUES ( ST_GeomFromEWKT('SRID=312;POINTM(-126.4 45.32 15)'), 'A Place' )
PostgreSQLの「標準的な形式」は単純なクエリ(全く関数呼び出しが無い)で表現でできていて,INSERT, UPDATE, COPYで受け付けられることが保障されるものです.PostGISの"geometory"型は次の通りです.
- Output - binary: EWKB ascii: HEXEWKB (EWKB in hex form) - Input - binary: EWKB ascii: HEXEWKB|EWKT
たとえば,このステートメントは,標準的なASCII文字列による入出力の処理でEWKTを読み,HEXEWKBを返すものです.
=# SELECT 'SRID=4;POINT(0 0)'::geometry; geometry ---------------------------------------------------- 01010000200400000000000000000000000000000000000000 (1 row)
SQLマルチメディア・アプリケーション空間仕様は,円弧補完曲線を定義したSQL仕様の拡張です.
SQL-MMの定義では,3dm,3dzと4dの座標を含みますが,SRID情報の埋め込みはできません.
WKT拡張はまだ完全にはサポートされていません.単純な曲線ジオメトリの例を次に示します.
CIRCULARSTRING(0 0, 1 1, 1 0)
CIRCULARSTRING(0 0, 4 0, 4 4, 0 4, 0 0)
CIRCULARSTRINGは基本的な曲線型で,LINESTRINGに似ています. ひとつのセグメントで,始点,終点(一つめと三つめ)と弧上の任意の点,の3点が必要です. 例外として,始点と終点が同じとなる閉曲線があります. 閉曲線では二つめの点が弧の中心,すなわち円の反対側にならなければなりません. 弧の連結では,LINESTRINGと同じように,前の弧の最後の点が次の弧の最初の点となります. よって,妥当なCIRCULARSTRINGは1以上の奇数になります.
COMPOUNDCURVE(CIRCULARSTRING(0 0, 1 1, 1 0),(1 0, 0 1))
複合曲線は,曲線(円弧)セグメントと線型セグメントの両方を持つ,単一の連続した曲線です. よって,要素が的確である必要があることに加え,各要素(最終要素は除く)の終点は次の要素の始点と同じになる必要があります.
CURVEPOLYGON(CIRCULARSTRING(0 0, 4 0, 4 4, 0 4, 0 0),(1 1, 3 3, 3 1, 1 1))
曲線ポリゴンの中に複合ポリゴンがある例は次の通りです. CURVEPOLYGON(COMPOUNDCURVE(CIRCULARSTRING(0 0,2 0, 2 1, 2 3, 4 3),(4 3, 4 5, 1 4, 0 0)), CIRCULARSTRING(1.7 1, 1.4 0.4, 1.6 0.4, 1.6 0.5, 1.7 1) )
CURVEPOLYGONは外環と0以上の内環とを持つ点でPOLYGONと似ています. 異なる点は,環に曲線ストリング,線型ストリング,複合ストリングのいずれも取れる点です.
PostGIS 1.4から,PostGISで曲線ポリゴンで複合曲線をサポートするようになりました.
MULTICURVE((0 0, 5 5),CIRCULARSTRING(4 0, 4 4, 8 4))
MULTICURVEは曲線のコレクションで,線型ストリング,曲線ストリング,複合ストリングを取れます.0
MULTISURFACE(CURVEPOLYGON(CIRCULARSTRING(0 0, 4 0, 4 4, 0 4, 0 0),(1 1, 3 3, 3 1, 1 1)),((10 10, 14 12, 11 10, 10 10),(11 11, 11.5 11, 11 11.5, 11 11)))
サーフェスのコレクションです.(線型)ポリゴンか曲線ポリゴンを取れます.
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PostGIS 1.4より前では,曲線ポリゴンで複合曲線をサポートしていませんでしたが, PostGIS 1.4以降は曲線ポリゴンでの複合曲線の使用をサポートするようになりました. |
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SQL-MM実装での全ての浮動小数点数の比較では,所定の丸め誤差があります.現在は1E-8です. |
ジオグラフィ型は,「地理」座標(しばしば「測地」座標,"lat/lon", "lon/lat", 緯度経度, 経度緯度 などとも呼ばれます)上で表現された空間フィーチャーのネイティブサポートするためのものです.地理座標は角度の単位(度)で合わさられる球面座標です.
PostGISのジオメトリ型の基礎は平面です.平面上の二点間の最短コースは直線になります.よって,ジオメトリ上の計算(面積,距離,長さ,インタセクション等)は,デカルト座標と線型ベクトルを使用することができます.
PostGISのジオグラフィ型の基礎は球面です.球面上での二点間の最短距離は大圏の弧です.よって,ジオグラフィ上の計算(面積,距離,長さ,インタセクション等)は,球面上で計算しなければならず,複雑な計算が必要となります.より正確な計測のためには,世界の実際の回転楕円体の形を考慮に入れなければならず,非常に複雑です.
基礎となる数学が大変に複雑なので,ジオグラフィ型用に定義された関数は,ジオメトリ型よりも少ないです.時間とともに,新しいアルゴリズムが追加されて,ジオグラフィ型の能力は拡大していくでしょう.
WGS84経度緯度(SRID:4326)のみサポートしているという制限があります. ジオグラフィと呼ばれる新しいデータ型を使用します. GEOS関数にこの新しい型をサポートする関数がありません. 回避策として,ジオメトリとジオグラフィの型変換を行うことができます.
ジオグラフィ型はPostgreSQL 8.3以上のtypmod定義書式を使います.ジオグラフィカラムを持つテーブルに1ステップで追加できます.標準OGC書式は曲線を除いてサポートします.
ジオグラフィ型は簡単なフィーチャーの最も簡単なもののみサポートします.標準的なジオメトリ型データで,SRIDが4326の場合は,ジオグラフィに自動でキャストされます.またEWKTとEWKBの取り決めを使うこともできます.
POINT: 2次元のポイントジオメトリを持つテーブルの作成は次の通りです.
CREATE TABLE testgeog(gid serial PRIMARY KEY, the_geog geography(POINT,4326) );
Z値を持つポイントの場合は次の通りです.
CREATE TABLE testgeog(gid serial PRIMARY KEY, the_geog geography(POINTZ,4326) );
LINESTRING
POLYGON
MULTIPOINT
MULTILINESTRING
MULTIPOLYGON
GEOMETRYCOLLECTION
新しいジオグラフィカラムはgeometry_columnsに登録されてません.システムカタログを見るgeomgraphy_columnsという新しいビューに登録されるので,AddGeom... といった関数を使わずに,自動管理されます.
"geography_columns"ビューをチェックして,テーブルがリストされているか見て下さい.
CREATE TABLEでジオグラフィカラムを持つテーブルを作ることができます. ジオメトリと違って,AddGeometryColumns()でメタデータにカラム情報を登録する処理を別に行う必要がなくなりました.
CREATE TABLE global_points ( id SERIAL PRIMARY KEY, name VARCHAR(64), location GEOGRAPHY(POINT,4326) );
locationカラムはGEOGRAPHY型で,二つのオプション修飾子をサポートすることにご注意ください. ひとつは,そのカラムで使用できる形状と次元を限定する型修飾子です.もうひとつは,座標参照IDを特定の数に限定するSRID修飾子です.
型修飾子で許される値は POINT, LINESTRING, POLYGON, MULTIPOINT, MULTILINESTRING, MULTIPOLYGON です.この修飾子ではZ, M, ZM の拡張子によって次元を限定します.たとえば,'LINESTRINGM'という値では,3次元で,第3次元が計測値(measure)となります.同じように見て 'POINTZM' は,4次元となります.
SRID修飾子には,現在は4326(WGS84)の許されるという制限があります.SRIDを指定したくない場合は 0 (未定義の回転楕円体) を使います.この場合の全ての計算は,WGS84とします.
将来的には,他のSRIDによって,WGS84以外の回転楕円体に関する計算ができるようにします.
テーブルを作ったら,次のようにしてGEOGRAPHY_COLUMNSを見ることができます.
-- See the contents of the metadata view SELECT * FROM geography_columns;
ジオメトリカラムを使うのと同じようにテーブルへのデータの挿入ができます.
-- Add some data into the test table INSERT INTO global_points (name, location) VALUES ('Town', ST_GeographyFromText('SRID=4326;POINT(-110 30)') ); INSERT INTO global_points (name, location) VALUES ('Forest', ST_GeographyFromText('SRID=4326;POINT(-109 29)') ); INSERT INTO global_points (name, location) VALUES ('London', ST_GeographyFromText('SRID=4326;POINT(0 49)') );
ジオメトリカラムと同じ操作でインデクスを作成します. PostGISは,カラム型がGEOGRAPHYであるかを見て,GEOMETRYで使われる平面用インデクスの代わりに球面ベースのインデクスを作成します.
-- Index the test table with a spherical index CREATE INDEX global_points_gix ON global_points USING GIST ( location );
クエリと計測関数はメートル単位となります.そのため距離パラメータはメートル(面積の場合は平方メートル)単位となります.
-- Show a distance query and note, London is outside the 1000km tolerance SELECT name FROM global_points WHERE ST_DWithin(location, ST_GeographyFromText('SRID=4326;POINT(-110 29)'), 1000000);
GEOGRAPHYの威力については,シアトルからロンドンまで(LINESTRING(-122.33 47.606, 0.0 51.5))の飛行機がレイキャビク(POINT(-21.96 64.15))に最も近くなるときの距離を求めてみると分かります.
-- Distance calculation using GEOGRAPHY (122.2km) SELECT ST_Distance('LINESTRING(-122.33 47.606, 0.0 51.5)'::geography, 'POINT(-21.96 64.15)':: geography);
-- Distance calculation using GEOMETRY (13.3 "degrees") SELECT ST_Distance('LINESTRING(-122.33 47.606, 0.0 51.5)'::geometry, 'POINT(-21.96 64.15)':: geometry);
GEOGRAPHY型は,レイキャビクとシアトル-ロンドン間の飛行機の大圏コースとの間の,球面上での本当に最も近い距離を計算します.
大圏コースマップ GEOMETRY型は,平面の世界地図上にプロットされたレイキャビクとシアトル-ロンドン間の直線とのデカルト距離という意味のない値を出します.結果の名目上の単位は「度」ですが,点間の本当の角度差にあっていませんので,「度」と言うこと自体不正確です.
GEOGRAPHY型によって,経度緯度座標でデータを格納できるようになりましたが, GEOGRAPHYで定義されている関数が,GEOMETRYより少ないのと,実行にCPU時間がかかる,というところが犠牲になっています.
選択した型が,期待する領域から出ないことを条件とすべきです. 使用するデータは地球全体か,大陸か,州か,自治体か?
ジオグラフィとジオメトリ間のサポート状況の比較については 「 PostGIS関数サポートマトリクス 」 をご覧ください.ジオグラフィ関数の簡潔なリストと説明については 「 PostGISジオグラフィサポート関数 」 をご覧ください.
OpenGISの「SQL用シンプルフィーチャー仕様」では,標準GISオブジェクト型とこれらを操作するために必要な関数,メタデータテーブルのセットが定義されています.メタデータが一貫性を維持していることを保証するために,空間カラムの生成,消去といった操作はOpenGISで定義されている空間プロシージャを通して実行されます.
OpenGISメタデータテーブルは二つあります.SPATIAL_REF_SYS
とGEOMETRY_COLUMNS
です.SPATIAL_REF_SYS
テーブルは空間データベースで用いられる座標系の,数字によるIDと文字による説明を持っています.
spatial_ref_sysテーブルは,PostGISに含まれるもので,3000以上の空間参照系を持つ,OGC準拠のデータベーステーブルで,さらに言うと,空間参照系間の変換や投影変換に使われます.
PostGISのspatial_ref_sysテーブルには,projライブラリで使われる3000以上の一般に使われる空間参照系定義がありますが,全てを持っているわけではなく,proj4の構築に慣れているならカスタム投影を定義することができます.ほとんどの空間参照系は地域限定のもので,想定されている範囲の外で使うと意味が無いことにご留意ください.
PostGISのコアセットに入っていない空間参照系を探すための素晴らしい資料が http://spatialreference.org/ にあります.
よく共通的に使われる空間参照系は次の通りです. 4326 - WGS 84 経度緯度, 4269 - NAD 83 経度緯度, 3395 - WGS 84 メルカトル図法, 2163 - 米国ナショナルアトラス正積図法, NAD83, WGS84 UTM の空間参照系 - UTMゾーンは計測に最も理想的なもののひとつですが6度(訳注: 経度を指します)の領域しかカバーしません.
さまざまな米国の州の平面空間参照系(メートルまたはフィート単位) - 通常は州ごとに一つか二つあります.メートル単位のもののほとんどがPostGISのコアセットに入っていますが,多数のフィート単位のものやESRIが作ったものについては spatialreference.org から取得して下さい.
対象領域がどのUTMゾーンになるかを決めるには, utmzone PostGIS plpgsql helper function を参照して下さい.
SPATIAL_REF_SYS
テーブル定義は次の通りです.
CREATE TABLE spatial_ref_sys ( srid INTEGER NOT NULL PRIMARY KEY, auth_name VARCHAR(256), auth_srid INTEGER, srtext VARCHAR(2048), proj4text VARCHAR(2048) )
SPATIAL_REF_SYS
のカラムは次の通りです.
一意に定められた整数値で,データベースで空間参照系(SRS)を識別するものです.
その参照系の引用元である標準の名前です.たとえば「EPSG」は妥当なAUTH_NAME
です.
AUTH_NAME
で引用される団体によって定義された空間参照系のIDです.EPSGの場合,EPSG投影コードが入ります.
空間参照系のWell-Knownテキスト表現です.たとえば,WKT SRSの表現は,次のようになります.
PROJCS["NAD83 / UTM Zone 10N", GEOGCS["NAD83", DATUM["North_American_Datum_1983", SPHEROID["GRS 1980",6378137,298.257222101] ], PRIMEM["Greenwich",0], UNIT["degree",0.0174532925199433] ], PROJECTION["Transverse_Mercator"], PARAMETER["latitude_of_origin",0], PARAMETER["central_meridian",-123], PARAMETER["scale_factor",0.9996], PARAMETER["false_easting",500000], PARAMETER["false_northing",0], UNIT["metre",1] ]
EPSG投影コードと対応するWKT表現の一覧については,http://www.opengeospatial.org/をご覧下さい. WKTの一般的な議論については,OpenGISの「座標変換サービス実装仕様」 http://www.opengeospatial.org/standards をご覧下さい.欧州石油調査グループ(European Petroleum Survey Group, EPSG)と EPSG空間参照系のデータベースに関する情報は,http://www.epsg.org をご覧下さい.
PostGISは座標変換機能を提供するためにProj4ライブラリを用いています. PROJ4TEXT
カラムには,特定のSRIDを示すProj4座標定義文字列が入ります.たとえば次のようになります.
+proj=utm +zone=10 +ellps=clrk66 +datum=NAD27 +units=m
詳細情報については,Proj4ウェブサイトhttp://trac.osgeo.org/proj/ をご覧下さい.spatial_ref_sys.sql
は,全てのEPSG投影法のためのSRTEXT
とPROJ4TEXT
を持っています.
GEOMETRY_COLUMNS
テーブルは,次のように定義されています.
CREATE TABLE geometry_columns ( f_table_catalog VARRCHAR(256) NOT NULL, f_table_schema VARCHAR(256) NOT NULL, f_table_nam VARCHAR(256) NOT NULL, f_geometry_column VARCHAR(256) NOT NULL, coord_dimension INTEGER NOT NULL, srid INTEGER NOT NULL, type VARCHAR(30) NOT NULL )
カラムについては次の通りです.
ジオメトリカラムを持つフィーチャーテーブルの完全修飾名."catalog"および"schema"の語はOracle風であることに注意して下さい."catalog"に類似するものはPostgreSQLになく,このカラムは空白にされます."schema"についてはPostgreSQLスキーマ名が使われています(public
がデフォルトです).
フィーチャーテーブル内のジオメトリカラムの名前.
そのカラムの空間の次元(2, 3 または 4).
このテーブルの座標ジオメトリのために使われる空間参照系のID.SPATIAL_REF_SYS
への外部キーになっています.
空間オブジェクトの型.空間カラムを単一型に制限するには,POINT, LINESTRING, POLYGON, MULTIPOINT, MULTILINESTRING, MULTIPOLYGON, GEOMETRYCOLLECTION のうちのいずれかを,また,XYMで使う場合には LINESTRINGM, POLYGONM, MULTIPOINTM, MULTILINESTRINGM, MULTIPOLYGONM, GEOMETRYCOLLECTIONM のうちのいずれかを使います.複数の型が混合するコレクションの場合は "GEOMETRY" を型とすることができます.
![]() | |
この属性は(おそらく)OpenGIS仕様の一部になっていませんが,型の同一性を保証するために必要です. |
空間データを持つテーブルを生成するには,次の通り二段階で行います.
通常の非空間テーブルを生成します.
例: CREATE TABLE ROADS_GEOM ( ID int4, NAME varchar(25) )
OpenGISの "AddGeometryColumn"関数によって空間カラムをテーブルに追加します.
文法は次の通りです.
AddGeometryColumn( <schema_name>, <table_name>, <column_name>, <srid>, <type>, <dimension> )
現在のスキーマを使う場合には次のようにします.
AddGeometryColumn( <table_name>, <column_name>, <srid>, <type>, <dimension> )
例1: SELECT AddGeometryColumn('public', 'roads_geom', 'geom', 423, 'LINESTRING', 2)
例2: SELECT AddGeometryColumn( 'roads_geom', 'geom', 423, 'LINESTRING', 2)
次はテーブルを作成して空間カラムを作る例です(128というSRIDがあると仮定します).
CREATE TABLE parks ( park_id INTEGER, park_name VARCHAR, park_date DATE, park_type VARCHAR ); SELECT AddGeometryColumn('parks', 'park_geom', 128, 'MULTIPOLYGON', 2 );
もうひとつ,ジェネリックな"geometry"型とSRID不明を示す-1を使った例を挙げます.
CREATE TABLE roads ( road_id INTEGER, road_name VARCHAR ); SELECT AddGeometryColumn( 'roads', 'roads_geom', -1, 'GEOMETRY', 3 );
AddGeometryColumn()アプローチは,ジオメトリカラムを作成して,新しいカラムをgeometry_columnsテーブルに登録します. ソフトウェアでgeometry_columnsを使う場合には,クエリに必要なジオメトリカラムを全てこのテーブルに登録する必要があります. ジオメトリカラムをgeometry_columnsに登録したいけれどもAddGeometryColumnが使えないというケースとしては, SQLビューである場合と,巨大なデータ挿入の場合です. これらの場合はカラムをgeometry_columnsテーブルに手動で登録する必要があります.次に簡単な登録スクリプトを示します.
--次のように作ったビューがあるとしましょう CREATE VIEW public.vwmytablemercator AS SELECT gid, ST_Transform(the_geom,3395) As the_geom, f_name FROM public.mytable; --このビューをgeometry_columnsに登録するには次のようにします. INSERT INTO geometry_columns(f_table_catalog, f_table_schema, f_table_name, f_geometry_column, coord_dimension, srid, "type") SELECT '', 'public', 'vwmytablemercator', 'the_geom', ST_CoordDim(the_geom), ST_SRID(the_geom), GeometryType(the_geom) FROM public.vwmytablemercator LIMIT 1;
--巨大なデータ挿入によって派生テーブルを作ったとしましょう SELECT poi.gid, poi.the_geom, citybounds.city_name INTO myschema.myspecialpois FROM poi INNER JOIN citybounds ON ST_Intersects(citybounds.the_geom, poi.the_geom); --新しいデーブルにインデクスを作ります CREATE INDEX idx_myschema_myspecialpois_geom_gist ON myschema.myspecialpois USING gist(the_geom); --手動でこの新しいテーブルのジオメトリカラムをgeometry_columnsに登録するには,ビューの時と同じようにします. INSERT INTO geometry_columns(f_table_catalog, f_table_schema, f_table_name, f_geometry_column, coord_dimension, srid, "type") SELECT '', 'myschema', 'myspecialpois', 'the_geom', ST_CoordDim(the_geom), ST_SRID(the_geom), GeometryType(the_geom) FROM public.myschema.myspecialpois LIMIT 1;
PostGISはOpen Geospatial Consortium (OGC)のOpenGIS使用に準拠しています. このように,多くのPostGISメソッドは 操作するジオメトリが単純かつ妥当である必要がある(正確に言うとそう過程します). たとえば,ポリゴンの外に穴があるようなものの面積を計算したり,単純でない境界線を持つポリゴンを作ったりするのは,意味がありません.
OGS仕様に沿うと,単純なジオメトリとは,自己インタセクトや自己接触があるような,異常な幾何点を持たないことです.主に0次元または1次元のジオメトリ([MULTI]POINT, [MULTI]LINESTRING
)に適用します.
他方,ジオメトリの妥当性は,主に2次元ジオメトリ([MULTI]POLYGON)
)に適用し,妥当なポリゴンを特徴づける位置指定子の集合を定義します.個々のジオメトリクラスには,単純性と妥当性をさらに詳細に述べる特定の条件があります.
POINT
は0次元ジオメトリオブジェクトとして常に単純です.
MULTIPOINT
は,二つの座標値(POINT
)が同じでないなら単純です.
LINESTRING
は2度同じPOINT
を通らない(終点は除きます.この場合は線型環と呼ばれ,さらに閉じていると思われます)なら単純です.
![]() (a) | ![]() (b) |
![]() (c) | ![]() (d) |
(a)と(c)は単純な |
MULTILINESTRING
は,
全ての要素が単純で,かつ任意の2要素のインタセクトが要素の境界であるPOINT
でだけ発生する場合に限って,
単純です.
![]() (e) | ![]() (f) | ![]() (g) |
(e)と(f)は単純な |
定義からPOLYGON
は常に単純です.
バウンダリ内の環(外環と内環からなる)のうち二つがクロスしていないなら妥当です.
POLYGON
の境界は,POINT
とインタセクトするかも知れませんが,接点にしかなりません(すなわち線上にない).
POLYGON
は切られた線またはスパイク(訳注: ポリゴンから「スパイク」のように出た線)をもたなくても良く,内環は外環の中に完全に含まれていなければなりません.
![]() (h) | ![]() (i) | ![]() (j) |
![]() (k) | ![]() (l) | ![]() (m) |
(h)と(i)は妥当な |
MULTIPOLYGON
は,全ての要素が妥当で,ポリゴン要素のうち二つについて内環がインタセクトしていない場合のみ妥当です.
ポリゴン要素の任意の二つの境界が接触してもよいですが,POINT
の数は有限です.
![]() (n) | ![]() (o) |
(n)と(o)は妥当な |
GEOSライブラリに実装されている関数のほとんどは,ジオメトリがOpenGIS Simple Feature Specificationで定義されているように妥当であると仮定しています.ジオメトリが単純であるか,また妥当であるか,のチェックとしてST_IsSimple()とST_IsValid()が使えます.
-- 一般的に,線型のフィーチャーの妥当性のチェックは, -- 常にTRUEを返すので意味がありません. -- しかし,この例では,PostGISは,線型の環(開始点と終了点が同じ)が -- 二つ以下のバーテックからなる場合はFALSEを返すように -- OGCのIsValidの定義を拡張しています. gisdb=# SELECT ST_IsValid('LINESTRING(0 0, 1 1)'), ST_IsValid('LINESTRING(0 0, 0 0)'); st_isvalid | st_isvalid ------------+----------- t | f
デフォルトでは,PostGISはジオメトリ入力に関するこの妥当性チェックを適用しません. 複雑なジオメトリの妥当性のチェックはCPU時間を多く必要とするためです. データソースが信用できない場合は,手動でこのチェックを強制するための制限を付けることができます.
ALTER TABLE mytable ADD CONSTRAINT geometry_valid_check CHECK (ST_IsValid(the_geom));
妥当な入力ジオメトリでPostGIS関数を呼んだのに "GEOS Intersection()がエラーを投げました!" や "JTS Intersection()がエラーを投げました!" というようなメッセージに遭遇したら,それはたぶん,PostGISまたは使用しているライブラリの中のエラーを発見しました. PostGIS開発者にコンタクトを取るべきです. PostGIS関数が妥当である入力ジオメトリから妥当でないジオメトリが返る場合も同じです.
![]() | |
厳格にOGCジオメトリに準拠すると,Z値やM値を持てません. ST_IsValid()は高次を考慮に入れません. AddGeometryColumn()を実行するとジオメトリの次元をチェックする制約が加わるので,2をそこで指定することで十分です. |
代表的な空間述語(ST_Contains, ST_Crosses, ST_Intersects, ST_Touches, ...)は, 求める空間フィルタを十分に提供しきれないことがあります.
![]()
たとえば,道路網を表現する線型のデータセットがあるとします.ビジネスルールを無視しているかも知れませんが,点でクロスするだけでなく線上でクロスする道路区間を全て判別することがGIS解析者の仕事となるかも知れません.この場合,ST_Crossesでは重要な空間フィルタとして十分ではありません.線型のフィーチャーでは,点でクロスしている場合のみ
空間的にインタセクトしている(ST_Intersects)と判別された二つの区間の組み合わせについての実際のインタセクト(ST_Intersection)を取り,
インタセクトのST_GeometryTypeが' よりエレガントかつ速い解法が本当に望ましいでしょう. |
![]() 二つ目の[理論的な]例として,GIS解析者が全ての湖の境界に線でインタセクトする波止場やドックの全ての位置を特定しようとするとします.ここで,波止場の一端だけ陸にあるとします.言いかえると,波止場が湖の中にあるが完全に中に入りきってはいなくて,湖と線でインタセクトして,波止場の一方の端が完全に湖に入っていて,かつもう一方の端点が境界線上にあります.解析者は空間述語の組み合わせでフィーチャーの後で探索対象を引き出さなくてはならないかも知れません.
|
ここで,Dimensionally Extended 9 Intersection Modelまたは略してDE-9IMを見てみましょう.
OpenGIS Simple Features Implementation Specification for SQLによると「二つのジオメトリの比較の基本的なアプローチは,二つのジオメトリの内部,境界,外部のインタセクションの比較と,『インタセクション行列』の要素に基づく2ジオメトリの関係の分類です」.
ジオメトリの境界はひとつ低い次元のジオメトリの集合です.0次元のPOINT
の境界は空集合です.LINESTRING
の境界は二つの端点です.POLYGON
の境界は外環と内環を形成する線です.
ジオメトリの内部は境界を取り去った際に残るジオメトリです.
POINT
の内部はPOINT
そのものです.LINESTRING
の内部は二つの端点の間の実際の点です.POLYGON
の内部はポリゴンの内側の範囲です.
ジオメトリの外部は,内部と境界を除いた全領域です.
ジオメトリaがあり,aの内部,境界,外部をそれぞれI(a), B(a), E(a)とします.数学的な行列表現は次のようになります.
内部 | 境界 | 外部 | |
---|---|---|---|
内部 | |||
境界 | |||
外部 |
ここでdim(a)はaの次元で,ST_Dimensionで規定されますが,{0,1,2,T,F,*}
の値域を持ちます.
0
=> ポイント
1
=> ライン
2
=> 領域
T
=> {0,1,2}
F
=> 空集合
*
=> 何でも良い
可視化すると,二つのオーバラップするポリゴンについては,次のようになります.
| ||||||||||||||||||
|
|
左から右,上から下に読むと,次元行列は'212101212'と表現されます.
一つ目の例である線上での2線のインタセクトは,関係行列で'1*1***1**'となります.
-- 線上でクロスする道路区間の判別 SELECT a.id FROM roads a, roads b WHERE a.id != b.id AND a.geom && b.geom AND ST_Relate(a.geom, b.geom, '1*1***1**');
二つ目の例である一部が湖の水涯線上にある波止場は,関係行列で'102101FF2'となります.
-- 一部が湖の水涯線上にある波止場の判別 SELECT a.lake_id, b.wharf_id FROM lakes a, wharfs b WHERE a.geom && b.geom AND ST_Relate(a.geom, b.geom, '102101FF2');
これ以上の情報ついては,次のページをご覧ください.
OpenGIS Simple Features Implementation Specification for SQL (version 1.1, section 2.1.13.2)
Dimensionally Extended Nine-Intersection Model (DE-9IM) by Christian Strobl
Encyclopedia of GIS By Hui Xiong
空間テーブルを作成したら,これでGISデータをデータベースにアップロードする準備ができたことになります.現在,PostGIS/PostgreSQLデータベースにデータをロードするには,SQLステートメントを使う,またはシェープファイルのローダ/ダンパを使う,二つの方法があります.
データをテキスト表現に変換できるなら,フォーマットされたSQLを使うのがデータをPostGISに入れる最も簡単な方法です.Oracleや他のSQLデータベースを使うように,SQL端末モニタにSQLの"INSERT"ステートメントで一杯になった大きなテキストファイルをパイプで送ることで,大量のデータをロードできます.
データアップロードファイル(たとえばroads.sql
l)はこのようになるでしょう.
BEGIN; INSERT INTO roads (road_id, roads_geom, road_name) VALUES (1,ST_GeomFromText('LINESTRING(191232 243118,191108 243242)',-1),'Jeff Rd'); INSERT INTO roads (road_id, roads_geom, road_name) VALUES (2,ST_GeomFromText('LINESTRING(189141 244158,189265 244817)',-1),'Geordie Rd'); INSERT INTO roads (road_id, roads_geom, road_name) VALUES (3,ST_GeomFromText('LINESTRING(192783 228138,192612 229814)',-1),'Paul St'); INSERT INTO roads (road_id, roads_geom, road_name) VALUES (4,ST_GeomFromText('LINESTRING(189412 252431,189631 259122)',-1),'Graeme Ave'); INSERT INTO roads (road_id, roads_geom, road_name) VALUES (5,ST_GeomFromText('LINESTRING(190131 224148,190871 228134)',-1),'Phil Tce'); INSERT INTO roads (road_id, roads_geom, road_name) VALUES (6,ST_GeomFromText('LINESTRING(198231 263418,198213 268322)',-1),'Dave Cres'); COMMIT;
データファイルは,次に示す"psql"というSQL端末モニタを使って,簡単にPostgreSQLにパイプで送られます.
psql -d [database] -f roads.sql
shp2pgsql
データローダは,ESRIシェープファイルをPostGIS/PostgreSQLデータベースに挿入するための適切なSQLに変換します.ローダには,次に示すコマンドラインフラグによって識別される,いくつかの操作モードがあります.
さらに,コマンドラインローダのほとんどのオプションに対応するshp2pgsql-gui
グラフィカルユーザインタフェースがあります.一度限りでスクリプト化しないロードを行う場合やPostGISに不慣れな方にとって便利になるかもしれません.これはPgAdminIIIのプラグインとし構築することもできます.
新しいテーブルの作成とシェープファイルからのデータの読み込みを行います.これがデフォルトモードです.
シェープファイルからデータベーステーブルにデータを追加します.複数のファイルをロードするためにこのオプションを使う場合は,これらのファイルは同じ属性と同じデータ型を持つ必要があります.
シェープファイルにあるデータを持つ新しいテーブルを作成する前にデータベーステーブルを削除します.
テーブル作成のSQLコードを生成するだけで,実際のデータは追加しません.このモードは,テーブル作成とデータロードとを完全に分けたい場合に使用します.
ヘルプ画面を表示します.
出力データにPostgreSQLの"dump"書式を用います.このモードは -a, -c, -d が含まれます.デフォルトの"insert"によるSQL書式よりも,大変早くロードできます.大きなデータセットではこちらを使用して下さい.
指定したSRIDでジオメトリデーブルの作成とデータの読み込みを行います.
識別子(カラム,スキーマおよび属性)の大文字小文字を保持します.シェープファイルの属性は全て大文字であることに注意して下さい.
全ての整数を標準の32ビット整数に強制します. DBFヘッダではそれが正当であったとしても,64ビットのbigintを生成しません.
ジオメトリカラムにGiSTインデクスを生成します.
古い版(0.x版)のPostGISのためにWKT書式を出力します.このオプションによって,座標変動が発生し,また,M値が削除されることに注意して下さい.
入力データ(dbfファイル)の文字コードを指定します. dbfの全ての属性は指定された文字コードからUTF8に変換されます. SQL出力にSET CLIENT_ENCODING to UTF8コマンドが加えられ,バックエンドでUTF8からデータベースが内部で使用するように設定されている文字コードに再変換できます.
NULLジオメトリ操作方針(insert* = 挿入, skip = スキップ, abort = 強制終了)を選択します.
DBFファイルのみインポートします.対応するシェープファイルを持っていない場合, 自動的にこのモードになり,DBFファイルのみロードします. このフラグは,完全なシェープファイル群を持っていて,属性データだけが欲しくてジオメトリが欲しくない時のみ使用します.
ジオメトリ型のかわりに,ジオグラフィ型で,WGS84経度緯度(SRID=4326)を使用します(経度緯度データが必要です).
ローダを使って入力ファイルを生成してデータをアップロードするセッションの例を次に示します.
# shp2pgsql -c -D -s 4269 -i -I shaperoads.shp myschema.roadstable > roads.sql # psql -d roadsdb -f roads.sql
変換とアップロードはUNIXのパイプを使うと一回で実行できます.
# shp2pgsql shaperoads.shp myschema.roadstable | psql -d roadsdb
データは,SQLまたはシェープファイルローダ/ダンパを使ってデータベースから抜き出すことができます. SQLに関する節において,空間テーブルでの比較とクエリを行うために用いることができる演算子のいくつかを議論します.
データベースからデータを引き出す最もストレートな手段は,次のように,SQLのSELECTクエリを使ってカラムを可読なテキストファイルとして出力することです.
db=# SELECT road_id, ST_AsText(road_geom) AS geom, road_name FROM roads; road_id | geom | road_name --------+-----------------------------------------+----------- 1 | LINESTRING(191232 243118,191108 243242) | Jeff Rd 2 | LINESTRING(189141 244158,189265 244817) | Geordie Rd 3 | LINESTRING(192783 228138,192612 229814) | Paul St 4 | LINESTRING(189412 252431,189631 259122) | Graeme Ave 5 | LINESTRING(190131 224148,190871 228134) | Phil Tce 6 | LINESTRING(198231 263418,198213 268322) | Dave Cres 7 | LINESTRING(218421 284121,224123 241231) | Chris Way (6 rows)
しかし,返ってくる結果の数を削るために,なんらかの制限をかけることが重要となるときがあるでしょう.属性ベースの制限の場合,非空間テーブルで使う通常の文法と同じSQLを使うだけです.空間ベースの制限の場合,次のオペレータが使用可能であり,便利です.
この演算子で,ひとつのジオメトリのバウンディングボックスが他のバウンディングボックスとインタセクトするかを問い合わせることができます.
この演算子で,二つのジオメトリが幾何的に同一であるかを見ることができます.たとえば,'POLYGON((0 0,1 1,1 0,0 0))' は 'POLYGON((0 0,1 1,1 0,0 0))' と同じかを見ることができます (これは同じとなります).
この演算子は他より若干素朴なもので,二つのジオメトリのバウンディングボックスが同じかを見るだけです.
次に,これらの演算子をクエリで使うことができます. SQLコマンドラインからジオメトリとボックスの特定を行うときは, "GeomFromText()"関数で,明示的に文字列表現をジオメトリに変換しなければならないことに注意して下さい.たとえば,次のようになります.
SELECT road_id, road_name FROM roads WHERE roads_geom ~= ST_GeomFromText('LINESTRING(191232 243118,191108 243242)',-1);
上のクエリは"ROADS_GEOM"テーブルから,その値と等価である単一のレコードを返します.
"&&"演算子を使うとき,比較フィーチャーのBOX3DかGEOMETRYかを指定することができます.ただし,GEOMETRYを指定すると,それのバウンディングボックスが比較に使われます.
SELECT road_id, road_name FROM roads WHERE roads_geom && ST_GeomFromText('POLYGON((...))',-1);
上のクエリでは,比較するためにポリゴンのバウンディングボックスを用いています.
最も一般的な空間クエリは「フレームベース」のクエリでしょう.これは,表示するためのデータの価値のある「マップフレーム」を取得するために,データブラウザやウェブマッパのようなクライアントソフトウェアに使われます.このフレームで"BOX3D"オブジェクトを使う場合は,次のようなクエリになります.
SELECT ST_AsText(roads_geom) AS geom FROM roads WHERE roads_geom && SetSRID('BOX3D(191232 243117,191232 243119)'::box3d,-1);
ここで,BOX3Dの投影を指定していることに注意して下さい. SRIDを-1に設定しているのは,SRIDを指定しないということを示しています.
pgsql2shp
テーブルダンパは,データベースに直接接続して,テーブル(あるいはクエリによって定義されたもの)をシェープファイルに変換するものです.基本的な文法は次の通りです.
pgsql2shp [<オプション>] <データベース名> [<スキーマ名>.]<テーブル名>
pgsql2shp [<オプション>] <データベース名> <クエリ>
コマンドラインオプションは次の通りです.
特定のファイル名に出力を書きこみます.
接続先データベースのホスト名.
接続先データベースのポート.
データベースに接続するためのパスワード.
データベースに接続する際のユーザ名.
複数のジオメトリカラムを持つテーブルの場合の,シェープファイルの出力に使用するジオメトリカラム.
バイナリカーソルを使います.これは,実行時間を短くしますが,テーブルの非ジオメトリ属性がテキストへのキャストが無い場合には,動作しません.
Rawモード.gid
フィールドを落としたり,カラム名をエスケープしてはいけません.
後方互換: 古い(1.0.0以前)のPostGISデータベースからダンプする際に3次元のシェープファイルを出力します (デフォルトでは2次元になります). PostGIS-1.0.0+から始めている場合は次元は完全に反映されます.
インデクスは大きなデータセットを持つ空間データベースの利用を可能にするものです.インデクスなしでは,フィーチャーの検索でデータベースの全レコードを「シーケンシャルスキャン」する必要があります.インデクスをつけることで,データを検索木に組織化して,特定のレコードを発見するための検索をより早くすることができます. PostgreSQLは,B-Tree, R-Tree, GiST の三種類のインデクスをデフォルトでサポートしています.
B-Treeは,数字,文字,日付といった,ひとつの軸に沿ってソートできるデータに使用します. GISデータは合理的にひとつの軸に沿ったソートはできません ((0,0)と(0,1)と(1,0)で大きいのはどれでしょう?)ので,B-Treeインデックスは,ここでは使えません.
R-Treeはデータを長方形に分割して,さらにその長方形を小さい長方形に分割していったものです.R-Treeはいくつかの空間データベースでGISデータのインデクスに使われますが,PostgreSQLのR-Tree実装は,GiST実装ほどにロバストではありません.
GiST(Generalized Search Trees)インデクスはデータを「一方へのもの」(訳注: 「左側にあるもの」「上側にあるもの」など),「オーバラップするもの」,「中にあるもの」に分割して, GISデータを含む幅広いデータ型で使えるようにしたものです. PostGISではGISデータにインデクスを付けるためにGiSTの上でR-Treeインデクス実装を使用しています.
GiSTは「汎用的な検索木(Generalized Search Tree)」の意味で,インデックスの一般化された形式です.GISインデクスに加えて,GiSTは通常のB-Treeインデクスに従わない全ての種類の不規則なデータ構造(整数配列, スペクトラルデータ など)の検索速度を向上させるために使います.
ひとたびGISデータテーブルが数千行を超えたら,空間検索の速度向上のためインデクスを構築したくなるでしょう (これは属性検索でない場合です.属性でしたら通常のインデクスを属性フィールドに追加します).
GiSTインデクスを「ジオメトリ」カラムに追加するための文は次の通りです.
CREATE INDEX [インデクス名] ON [テーブル名] USING GIST ( [ジオメトリカラム名] );
空間インデクスの構築は,計算量を集中させて行われます.100万行のテーブルで,300MHzのSolaris機ではGiSTインデクスの構築に概ね1時間かかりました.インデクスを構築したあとは,クエリプランの最適化に使うため,次のようにPostgreSQLにテーブル統計情報の収集をさせることが重要です.
VACUUM ANALYZE [テーブル名] [カラム名]; -- 次のクエリはPostgreSQL 7.4以前でのみ必要です SELECT UPDATE_GEOMETRY_STATS([table_name], [column_name]);
GiSTインデクスはPostgreSQLのR-Treeインデクスより二つの利点を持っています.まず,GiSTインデクスは「NULLセーフ」,すなわちnull値を含むインデクスカラムで利用できることです.次に,GiSTインデクスはGISオブジェクトがPostgreSQLで8Kのページサイズを超えるサイズを扱う際に重要な「不可逆」の概念を持っていることです.不可逆にすることによって,PostgreSQLは,インデクスにおけるオブジェクトの「重要な」部分,GISオブジェクトの場合にはバウンディングボックスになりますが,これのみを納めることができます. R-Treeインデクスで8Kを超えるGISオブジェクトのインデクスを構築しようとすると,失敗します.
通常,インデクスは見えないところでデータアクセスの速度向上を行います.すなわち,ひとたびインデクスが構築されたら,クエリプランナは透過的に,クエリプランの速度を向上させるためにインデクス情報を使うべき時を判断します.残念なことに,PostgreSQLクエリプランナは,GiSTインデクスの使用について十分に最適化できず,時々,検索で空間インデクスを使用すべきなのに,テーブルを順に走査することがあります.
空間インデクスが使用されていない(または属性インデクスがその問題のために使用されていない)場合,次の二つのことができます.
まず,クエリプランナにインデクス使用まわりの判断に利用するためのより良い情報を提供するために,値の数量と分散に関する統計情報が収集されたかを確認してください. PostgreSQL 7.4以前では,update_geometry_stats([テーブル名, カラム名])(分散計算)とVACUUM ANALYZE [テーブル名] [カラム名](値の数量の計算)とを実行します. PostgreSQL 8.0については, VACUUM ANALYZEを実行することで同じ動作になります.常に定期的なデータベースへのvacuumを実行すべきです.多くのPostgreSQLのデータベースエージェントは,閑散時のcronジョブとして定期的にVACUUMを実行します.
vacuumが働かないなら,SET ENABLE_SEQSCAN=OFFコマンドで,プランナにインデクス情報を強制的に使わせることができます.このコマンドは控え目に実行すべきで,かつ,空間インデクスがあるクエリ上でのみ使うべきです.一般的に言うと,通常のB-Treeインデクスを使うべき時に関してあなたが知っていることよりも,プランナはより良く知っています.クエリを実行したら,ENABLE_SEQSCAN
設定を戻して,他のクエリでは通常通りプランナを使用することを考えるべきです.
![]() | |
version 0.6では, |
もし,順に走査する際のコストとインデクスを使う際のコストとを比較してプランナが間違っていることに気付いたら,postgresql.conf でrandom_page_costの値を減らしてみるか,"SET random_page_cost=#" を使ってみてください.このパラメータのデフォルト値は4ですが,それを1か2にしてみて下さい.値を減らすことで,プランナがよりインデクススキャンを行う傾向になります.
空間データベース機能のレゾンデートルは,通常はデスクトップGISに求める機能を,データベース内部のクエリで実現してすることです. PostGISを効果的に使用するには,どの空間機能が有効かを知り,また,良好なパフォーマンスを提供する所に適切にインデクスがあることが保証されていることが求められます.
クエリを作成するとき,&&のようなバウンディングボックスを基準とした演算子によってのみGiST空間インデクスの利点が出てくることだけは覚えておくことが重要です. distance()
のような関数では演算の最適化を行うためにインデクスを使うことができません.たとえば,次のクエリでは,大きなテーブルでは本当に遅くなります.
SELECT the_geom FROM geom_table WHERE ST_Distance(the_geom, ST_GeomFromText('POINT(100000 200000)', -1)) < 100
このクエリは,geom_tableにおける (100000, 200000) の点から距離が100単位以内にある全てのジオメトリを選択します.これは,テーブル内にあるそれぞれの点と指定した点との距離を計算する,すなわち,それぞれの行でひとつのST_Distance()
計算を行うため,遅くなるのです.これは,&&演算子を使うと,求められる距離計算の量を減らすことで回避できます.次のようにします.
SELECT the_geom FROM geom_table WHERE the_geom && 'BOX3D(90900 190900, 100100 200100)'::box3d AND ST_Distance(the_geom, ST_GeomFromText('POINT(100000 200000)', -1)) < 100
このクエリは,同じジオメトリを選択しますが,より効果的な方法で行われます.the_geomにGiSTインデクスがあると仮定すると,クエリプランナはdistance()
関数の結果を計算する前にインデクスを使って行を減らせると認識します. &&演算子で使われているBOX3D
ジオメトリは,原点を中心とした一辺 200単位の正方形です. これは「クエリボックス」です.&&演算子は 結果セットを「クエリボックス」にオーバラップするバウンディングボックスを持つジオメトリだけに素早く減らすためにインデクスを使います.「クエリボックス」がジオメトリテーブル全体の範囲より十分に小さいと仮定すると,行われなければならない距離計算の量は劇的に減少します.
![]() | ふるまいの変更 |
---|---|
PostGIS 1.3.0では,ST_DisjointとST_Relateの注目すべき例外がありますが,ほとんどのジオメトリ関係関数は暗黙的なバウンディングボックスオーバラップ演算子を含んでいます. |
本節の例では,線形の道,ポリゴンの自治体境界,の二つのテーブルを使います.テーブルの定義は,bc_roads
については次の通りです.
Column | Type | Description ------------+-------------------+------------------- gid | integer | Unique ID name | character varying | Road Name the_geom | geometry | Location Geometry (Linestring)
bc_municipality
の定義は次の通りです.
Column | Type | Description -----------+-------------------+------------------- gid | integer | Unique ID code | integer | Unique ID name | character varying | City / Town Name the_geom | geometry | Location Geometry (Polygon)