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C4植物についてのデータベースdatabase

この植物はどのサブタイプ?リスト

 文献などで出てきた植物がC4植物とだけ載っている場合、この植物がどのサブタイプなのだろうか?と調べてみたいのですが、あまり網羅されたものが世の中にありません。イネ科は『C4 Plant Biology』 (Academic Press)を見ると分かるのですが,その他の科について一覧になっている文献が少ないのです。私が調べたものだけですが、せっかくなので、表にしました(サブタイプ別のA-Z順)。

サブタイプの葉構造のいろいろ

C4サブタイプの維管束鞘細胞の構造については、下の図が教科書によく載っています。これは、3つのサブタイプの最も基本的な形ですが、維管束鞘が2層になっていたり、Distinctive cell があったり、実際にはかなり多様です。もっと詳しく知りたい方は上のアイコンをポチッと



C4植物の仲間、CAM植物 2020.11.20

トップページに、光合成には3種類ある、と書きました。ここでは、その一つCAM型光合成について書いてみたいと思います。CAM型光合成は、主にベンケイソウ科(Crassulaceae)植物を用いて研究されたので、「ベンケイソウ型有機酸代謝(crassulacean acid metabolism) と呼ばれるようになり、CAMの呼称が一般化しました。いまではこの型の炭酸固定を行う植物は、ヒカゲノカズラ植物門、シダ植物門、マツ門(裸子植物門)、被子植物門の38科以上、約400属にわたって16000種記載されており(Smith and Winter1996)、なんとC4植物にはないシダや裸子植物も含み、種数もC4植物(8100種)よりも多いのである。

CAM型光合成は、ある意味、C4光合成の仲間である、と私は思っている。CAM型光合成では、夜間にCO2を取り込み、C4植物と同じPEPカルボキシラーゼ(PEPc)という酵素の働きでCO2とPEPが結合し、オキザロ酢酸が生成され、その後リンゴ酸に還元される。ここまではC4光合成のNADP-ME型と同じだが、CAM型光合成では、夜にこの一連の作業(CO2吸収⇒リンゴ酸)を行い、リンゴ酸をいったん液胞に蓄えておき、朝を待つのである。リンゴ酸は、翌日の日光の存在下で、液胞から細胞質へ移動し、リンゴ酸の脱炭酸で放出されたCO2はルビスコによって固定され、PGAを経てデンプンおよび糖へと合成される。C4植物の場合は、2種類の細胞(違う場所)で分業しCO2を固定するが、CAM植物では、同じ場所でCO2を固定するが、昼と夜で分業しているのである。

(寄り道)へーっCAM型光合成ってうまくできているのね、と思った方は多いかと思うが、なんかおかしい、と思った方もいるはず。確かに同じ場所にルビスコとPEPcがあったら、夜に貯めたリンゴ酸から放出されたCO2はPEPcとくっついてしまい、ルビスコ(炭酸固定)が働かなくなる。Winterら(1980)は昼間PEPcはリンゴ酸によりその活性が抑えられることを突き止め、この疑問を解決した。

この昼夜の分業によって、CAM植物の様々な特性が表れます。1.夜間にのみ気孔を開きCO2を吸収する、2そのため、無駄に水分を失わない→乾燥地帯など水分条件が悪い環境でも生育を可能にした、3.有機酸を貯める液胞が必要→多肉の葉や茎を持つようになった、3.夜に有機酸がたまる(早朝が最も酸っぱい)→日が当たると減る(日変化)、pHも日変化、4.夜に貯めた有機酸の分だけしか光合成の原料がないため効率は悪い→ゆっくりと成長する。CAM植物であることを示すには、これらの性質を示せばよく、夜間のCO2吸収、葉内の有機酸やpHの日変化、PEPcは13CのCO2も多くとらえるため、δ13C値はC3植物よりC4植物に近い

      ⇒CAM植物の写真館へ(準備中) 

よくある質問と答えQ & A 2020.9.3

こんなサイトをやっていると、時々質問をメールで受けることがあります。そんな質問や、勝手に考えた質問と答えについて書いてみたいと思います。

Question:C4植物は、基本的に乾燥した暑い環境を好むようですが、湿った場所にも生えていますか?
Answer:湿った場所、例えばイネ科では、水田にイヌビエ、タイヌビエ、アゼガヤ、コブナクサ、ジュズダマ、水面を覆うように生えるキシュウスズメノヒエ、湿地にヒゲシバ。カヤツリグサ科では、カヤツリグサ科のカワラスガナ、イガガヤツリ、ウシクグ、テンツキ属のテンツキ、ヤマイ、ヒデリコ、ハタガヤ属のイトテンツキなどが生えます。不思議ですが、湿地というストレスに対する対策としてC4光合成が活用されているのかも?

Question:樹木にC4光合成を行う種はあるのですか?
Answer:世界に1種のみ知られています。それは、ハワイに分布するトウダイグサ科ニシキソウ属のChamaesyce forbesiiです。面白いのは、この種は、C4植物らしくなく、涼しい日陰に生育し、典型的な陰性植物の光合成を行っているそうです(Robichaux andPearcy 1980)。また、中央アジアの暑い砂漠に生育するヒユ科のHaloxylon aphyllumは、大きくなると木化し、樹木に近いかたちになるそうです。 最近はこんな論文も出ています。→Why are there no C4 forests?(なぜC4植物の森はないのか?)Sageら2016

Question:C4植物は、基本的に乾燥した暑い環境を好むようですが、日陰を好む種はあるのですか?
Answer:日陰でもC4植物は生育しています。低山地の樹林内や林縁に、アシボソ、イヌアワ、チョウセンガリヤス、ササガヤ、コササキビなどです。なぜC4植物のいいところを活かせる場所に生育しないのか、不思議です。