本文へスキップ
C4植物の研究者のWebサイトです  メールでのお問い合わせはこちら

C4植物の葉の構造いろいろ C4 Leaf Structure Database2021.8.16

“葉を透かして見るという技”について

C3植物かC4植物かを見分ける一つの技に”葉を透かして見るという技”があります。C3植物の葉脈には葉緑体がほとんどないため、葉脈が白く見えたらC3植物、で、C4植物は、維管束鞘細胞に葉緑体が集まっているため、葉脈が緑色に見えるというものです。下記左側の写真は、ササの葉を透かしてみたものです、確かに葉脈が白く見えます。そして、C3植物です。では、真ん中の写真の植物はC3植物でしょうか?それともC4植物でしょうか?葉脈が白く走っていますので、C3植物? しかしながら、よく見てみると白い葉脈の間の葉脈は緑色にも見えます。答から言うと、真ん中の写真はソルガムの写真の葉なので、C4植物です。C4植物であっても、大きな葉脈の一部は、下記のトウモロコシの葉の断面写真を見るとわかりますが、 葉緑体がない部分があり、C4植物でも葉脈が白くみえるのです。したがって、C3植物かC4植物かを見分けるには、大きな葉脈を見るのではなく、細い方の葉脈を見ればよいのです。
 イネ科“ササ(C3)"の葉を透かして見たところ
太い葉脈も細い葉脈も葉緑体が少なく、光が透過して白くみえる
 イネ科“ソルガム(C4)"の葉を透かしてみたところ
太い葉脈は葉緑体が少ない部分があり白く見え、細い葉脈は維管束鞘細胞に葉緑体が多く集まり緑に見える
   

“広葉でもイネ科と同じように見えるのか”について

イネ科では、C3植物かC4植物かを見分ける一つのテクニックとして、”葉を透かして、細い方の葉脈を見て、それが緑色かどうかでC3かC4かを判別できる技”について述べました。この技は果たして広葉でも通用するのだろうか? 答え:数種類しか調査していないが、イネ科と同様に、細めの葉脈を見れば、C3植物かC4植物か判断できそうです。
 広葉のキク科“セイタカアワダチソウ(C3)"の葉を透かして見たところ
太い葉脈も細い葉脈も葉緑体が少なく、光が透過して白くみえる
 広葉のヒユ科“ホナガイヌビユ(C4)"の葉を透かしてみたところ
太い葉脈は葉緑体が少ない部分があり白く見えるが、細い葉脈ほど葉緑体が多く集まり緑に見える
   

“いろんな葉を透かして見てみた”

単子葉では、イネ科とカヤツリグサ科、双子葉では、トウダイグサ科、スベリヒユ科、ブナ科の葉のサンプルも載せてみました。C3植物かC4植物かを見分けられるでしょうか?
 イネ科“ススキ(C4)"の葉を透かして見たところ
太い葉脈は白っぽく、細い葉脈は緑色に見える
 イネ科“アキノエノコログサ(C4)"の葉を透かして見たところ
中央の太い葉脈のみ白、細い葉脈は緑色に見える
 イネ科“スズメノヒエ(C4)"の葉を透かしてみたところ
太い葉脈は白、細い葉脈は緑色だが、葉緑体が少ない筋も多く見える
 イネ科“クサヨシ(C3)"の葉を透かして見たところ
C4葉(左)に比べれば、白い葉脈が目立つ
 イネ科“イネ(C3)"の葉を透かしてみたところ
クサヨシと同様にやはり白い葉脈が目立つ
         
                   
 ブナ科“ミズナラ(C3)"の葉を透かして見たところ
太い葉脈から細い葉脈まで、白色で、その点ではセイタカアワダチソウと同じ、C3葉の特徴である
 トウダイグサ科“アカメガシワ(C3)"の葉を透かして見たところ
アントシアンの影響で赤っぽいが基本白の葉脈が走る、やはりC3葉の特徴
 トウダイグサ科“コニシキソウ(C4)"の葉を透かしてみたところ
迷路のように緑色の葉脈が走っていた。左のアカメガシワも同科であるが、全く異なりC4葉の特徴。
 スベリヒユ科“スベリヒユ(C4)"の葉を透かしてみたところ
葉が厚いためぼんやりではあるが、太い葉脈から細い葉脈までは緑色に見える、やはりC4葉の特徴
 カヤツリグサ科“カヤツリグサ(C4)"の葉を透かして見たところ
C4らしく、葉脈は緑色だった、今度C3のカヤツリグサ科の種と比較してみたい
        

C4植物の葉の断面構造について

  さて、C4植物の葉の断面構造を一覧にしてみました。本文中のPCRはphotosynthetic carbon reductionの略でカルビン回路でCO2を固定すること、 PCAはinitial primary carbon assimilationの略で、気孔から入ってきたCO2を捕らえる反応のことを指します。 
イネ科
イネ科のC4植物の大部分は下記の3つの“Classical”型に属する。これらの3つは維管束鞘の層の数、維管束鞘の葉緑体の位置、グラナが発達しているかどうか、スベリン層の有無、維管束の輪郭がそろっているかどうかの点で区別されています。

“Classical”NADP-ME
Zea mays L.スベリン層を持つ一層の維管束鞘が存在し、これはメストム鞘がPCR組織として変化したものである。維管束鞘の輪郭はいびつである。本来外側にある維管束鞘 の層は消失した(Brown1975, Dengler et al.1985)。維管束細胞内の葉緑体にはグラナがなく、細胞小器官は遠心的に配置されている。

 “Classical”NADP-ME
Zea mays L
 “Classical”NADP-ME
Echinochloa crus-galli P.Beauv.
 “Classical”NADP-ME
Setaria italica
     

“Classical”NAD-ME
2層の鞘が存在し、スベリン層を持たない。外側の維管束鞘の外形は一様で、維管束鞘細胞内にはグラナを持つ葉緑体と多くのミトコンドリアが 求心的に配置されている。。

 “Classical”NAD-ME
Panicum milaceum
 
     

“Classical”PCK
2層の鞘(メストム鞘+維管束鞘(BS))が存在し、両方の鞘はスベリン層がある。外側の維管束鞘の外形はいびつで、維管束鞘細胞内にはグラナを持つ葉緑体と多くのミトコンドリアが遠心的か散らばっ た状態で配置されている。

 “Classical”PCK
Milinus minutiflora
“Classical”PCK
Zoysia japonica Steud.
 “Classical”PCK
Zoysia
     
“Classical”PCK
Panicum maximum
 “Classical”PCK
Chloris gayana
 
     

イネ科では上の生化学に対応した3つの“Classical”な型が主であるが、他にも5つの型がある。

 Structural type  Biochemical type  Photo
 Aristidoid

Aristida jerichoensis

 NADP-ME   
 2層の葉緑体を持つ維管束鞘(BS)を持つ。内側は典型的なPCRを行う維管束鞘であるが、外側は内側から漏れてきたCO2を再固定する 役目を果たしている(Hattersley1987, Ueno 1992, Sinha and Kellogg1996)。
維管束鞘にはスベリン層がないので、2層にしてCO2の漏れを防いでいると考えられる(個人的見解)。
 Neurachneoid

Alloteropsis semialata 

 NADP-MEorPCK  
 2層の維管束鞘をもつ、維管束鞘の葉緑体は遠心的に配置され、その葉緑体のグラナ発達している。スベリン層はなく、維管束鞘の輪郭は揃っている。
 Arundinelloid

Arundinella nepalensis

 NADP-ME  
 一層の維管束鞘をもつ。最も特徴的なのが葉脈と同じ方向にひも状のPCR組織“distinctive cells”(DC)である。典型的なPCR酵素の活性があり、スベリン層をもつ膜で囲まれている(Crookston and Moss 1973; Hattersley et al.1977, Hattersley and Browning 1981; Dengler et al.1990, 1996)。
 Triodeoid  NAD-ME  
 2層の維管束鞘をもつ、維管束鞘の葉緑体は遠心的に配置され、グラナは発達している。スベリン層があり、維管束鞘の外側の輪郭は揃っている
 Eriachneoid

Eriachne aristidea

 NADP-ME  
 2層の維管束鞘をもつ、維管束鞘の葉緑体は遠心的か求心的に配置され、グラナは発達している。スベリン層はない

カヤツリグサ科には4タイプの葉構造があり,NADP-ME型とNAD-ME型が存在する(Lerman and Raynal,1972; Raynal, 1973; Takeda et al.1980; Ueno et al.,1986; Bruhl et al., 1987; Estelia-Texeira and Handro, 1987).
 Structural type  Biochemical type  Photo
Rhyncosporoid

Rhyncospara sp.

 
 NADP-ME  
 一層の維管束鞘細胞があるが、これはメストム鞘がPCR組織を持ったものである。
 Eleocharoid

Eleocharis retroflexa

 

NAD-ME

 
 葉緑体を含んだ維管束がメストム鞘の内側にあり、PCRの機能を持っている(Brown1975)。Eleocharoid型では光合成組織が連続した層になっている(Bruhl et al.1987; Ueno and Samejima, 1989)、PCR組織がPCA組織のある細胞間隙からスベリン層の細胞壁をもつメストム鞘層によって完全に分離されている
 Fimbristyloid

Fimbristylis dichotoma

 NADP-ME  
 葉緑体を含んだ維管束がメストム鞘の内側にあるが、後生木部で中断されている。
 Chlorocyperoid

Cyperus polystachyos

 NADP-ME  
 葉緑体を含んだ維管束がメストム鞘の内側にあるが、後生木部で中断されている。

C4双子葉植物の葉構造はイネ科やカヤツリグサ科より複雑。最近、クランツ構造を持たないC4光合成は双子葉(アカザ科)で見つかっている。また、PCK型の双子葉はまだ見つかっていない (存在しないのかもしれない)。
 Structural type  Biochemical type  Photo
 Atriplicoid

Amaranthus mongostanus

 NAD‐MEorNADP-ME  
 一層の維管束鞘が維管束を囲み、この組織はPCRの機能を持つ
 Kochioid

Bassia hyssopfolia

 
 中心の葉緑体を含まない基本組織(N)の周辺に維管束鞘があり、葉肉組織が葉の外側に発生している
 Salsoloid

Salsola laricina

 NADP‐ME  
 中心に貯水組織によって囲まれたメインの葉脈があり、柵状の葉肉細胞の層を外側にもち、その内側にPCR組織であるKranz細胞をもつ。柵状組織の葉緑体にはグラナが少なく、デンプンが無い。Kranz細胞の葉緑体にはグラナがあり、デンプン粒をもつ(Voznesenskaya, E V.1986)。
 Kranz-suaedoid    準備中
 Salsoloid型に似ているが、維管束がもっと中央にあり、直接維管束鞘細胞とつながっていない

下記の2種が最近見つかったクランツ構造を持たないC4植物の形態である。単一の細胞内でC4光合成が機能している。どちらもアカザ科で二つとも中央アジアで発見されている。
 Structural type  Biochemical type  Photo
 borszczowioid

Borszczowia aralocaspica

 NAD-ME  
 Salsola型の光合成を単一の細胞で行っている。細胞内には光合成酵素群を空間的に区分けをすることまた、2種類の葉緑体や他の細胞小器官を緑色組織細胞内の別の場所に分離しておくことでC4光合成を成立させている。 詳しくは下記の論文(*)を読んでください。
 bienertiod

Bienertia cycloptera

 多分NADP‐ME  
 それぞれの細胞が球状の組織と散らばった状態の葉緑体を持っており、散らばった細胞でCO2の濃縮(葉肉組織の働き)を行い、中心の球状の組織で(デンプン粒をもつので)PCR機能を果たしていると考えられる 、詳しくは下記の論文(**)を読んでください。

*「Kranz anatomy is not essential for terrestrial C4 plant photosynthesis」
Voznesenskaya E. V. et al.(Edwards Group)Nature 414, 543-546 2001
これまで2種類の異なった光合成細胞からなる葉の特殊な構造(クランツ型構造)がC4光合成には必要と考えられてきた。この報告にあるBorszczowia aralocapica (アカザ科の一種)はクランツ構造が持たないが、単一の光合成細胞内に光合成酵素群を空間的に区分けすること、また、2種類の葉緑体や他の細胞小器官を緑色組織細胞内の別の場所に分離しておくことで、C4光合成を行っており、C4光合成にとって必ずしもクランツ構造が必要でないことを示した。

**「Bienertia cycloptera Bunge ex Boiss., Chenopodiaceae, another C4 Plant without Kranz Tissues」 Freitag H. and W. Stichler Plant biol. 4 121-132 2002
クランツ構造をもたないC4光合成の第2弾です。クランツ構造を持たないC4光合成を行うBorszczowia aralocapica を最初に発表した人と同じ方です。今度の場合も単一の光合成細胞内に2種の細胞があり、空間的に区分けされています。その区分けした形が大変ユニークで、細胞の真ん中に葉緑体を球状に固めたものと周辺の葉緑体とに別れます。今回はデンプンの有無とδ13Cの値からC4であることを確認しています。続報は「Bienertia cycloptera Bunge ex Boiss., Chenopodiaceae, another C4 Plant without Kranz Tissues」 Freitag H. and W. Stichler Plant Journal. 4 121-132 2002です.

その他のC4光合成に関わる面白そうな文献
「Characteristics of C4 photosynthesis in stems and petioles of C3 flowering plants」
Juliqn M. H. and W. P. Quick Nature415,451-454 2001
典型的なC3植物であるタバコで茎と葉柄の木部と師部を囲んでいる細胞でC4光合成の特徴が見られる(C4光合成に特有の酵素活性が高い)こと、またこれらの細胞で光合成に使われる炭素原子は気孔からではなく維管束系から供給されていることを示した。上記のような細胞では木部と師部から得られる炭素原子4個を含む有機化合物を脱炭酸して光合成に使うことができる。そして、 個人的に過大解釈するとこの茎、葉柄での現象が葉に広がったのがC4光合成ということになる(直接的にそのような進化の過程は証明されていない)